思うに私はあと一年でも二年でも遅く生まれてくるべきだったのだ。留三郎は得てして年下を可愛がるのが好きな男である。失敗したなあなんて六年間一緒に過ごせるという同学年の僥倖を無視してまでそう思うのは、現在私と留三郎の関係が脅かされつつあるからで、その原因となりそうな泥棒猫であり女狐であり雌豚野郎である糞女がやはり年下なのだった。しかもあの女年下の癖に巨乳なのだ。恐るべき哉、ロリ系巨乳の魅力よ。何がとめさぶろうせんぱあ〜い☆だ。うぜえことこの上ない。留三郎の前じゃ舌ッ足らずにキョルキョルとしながら話す癖に、男がいなくなると私への軽蔑を隠さずに 「先輩の何処がいいのかな?あんたわかる〜?」 「わかんなーい!」 「でしょ?でしょ?だからとっちゃいまーす!」 と取り巻き連れて騒ぎ立てるのでマジ、ぶっ殺していいかな?やっちゃっていいかな?と思ったことは一度や二度ではないのだが、あんなクズみたいな女でも一応学園の生徒であり、殺して退学になったら私は自動的に留三郎を失うので取り敢えず得意武器の鉄扇をきちんと箱にしまっておいている。しかし留三郎があの女を選んだらあの女の命日はその日になるだろう。幸せの絶頂で死ぬがいいわ。くはは。涙出てきよった。袖を引っ張って鼻を拭こうとすると、留三郎がそれより早く手ぬぐいを私の顔に押し付けてゴシゴシと拭った。痛い。あの子にはそんなことしないくせに! 「、落ち着け」 「落ち着いてるわよ。だから殺してないんじゃん」 「あーもう唇噛むな。赤くなんだろーが」 「アンタだって赤くなってるわよ!首のとこ!」 「仕方ねーだろ!授業なんだぞ!」 「だって・・・なんであの女なのよう・・・」 私だって別にただロリ系の性格の悪い後輩が留三郎にモーションかけてるだけだったら、いくら悪口叩かれようが、むかつきはするが留の前で泣いたりはしない。しかしあの女と留三郎には一度きりとはいえ肉体関係があるのである。なぜかと言えば、まあ授業の関係で仕方なかったのだ。だからこんなこといいたかない。私だって忍者の卵なのだから、一応留三郎以外とそういうことになることもあるし、逆もまた然りなのは当たり前のことだ。留は私がそういうことをして帰ってきても変わらず優しいし、私だって留に対してそんなことをイチイチ言及したことは今迄一度もなかった。遊女を買おうがなんだろうが身体だけならしかたないと諦めもつく。しかしあの女は。明らかに本気なのである。本気と書いてマジで読む勢いで、その豊満な肉体を駆使して私から留三郎をかっさらう算段なのである。いやだ。私の胸はお椀にするにも浅すぎるシロモノだし、別にロリ系でもないし、とめさぶろうせんぱ〜い☆とも言えないし、このままでは負けてしまう。負けてしまった場合、多分本気であの女を殺そうかどうしようか、考えると思うのだが、留が選んだ女を私が殺せるのか?という大きな問題が残り、それは多分殺せないので、私は藁を束ねて人形を作り、血であの女の名前を書いた札にあの女の髪を包んで人形に巻きつけたものを携え、頭の上に蝋燭を立てた五徳を被り、白装束に白化粧を施し、胸には鏡、腰には守り刀、口に櫛を咥え一本歯の下駄を履いて丑の刻に金楽寺に参ってしまうような、気の弱い、健気な女の子になってしまうに違いない。あなや。私は悲しくて一層泣いた。留三郎は呆れて溜息をついた。 「いやもうほんと泣き止めって。ねえから。お前だけだから」 「だって巨乳じゃん・・・」 「乳で選んでねえんだよ!」 「あの子の頭撫でてたし・・・」 「わかった。お前の頭をその十倍撫でてやるから泣くな」 よーしよーしと言いながら野良犬でもて手懐けるかのように留三郎は私の頭を撫でる。しかし私の思考は完全に袋小路に陥っていて悪いことばかり考えるので涙が止まらず、取り敢えず嗚咽だけは抑えるため唇を噛み、俯いて、床の木目などを数えた。その隙にも涙はぼろぼろ溢れて乾いた床板に染みをつけていく。留三郎は仕方なさそうにしながらも開いたほうの手で私の涙を丁寧に掬う。面倒くさいだろうなあと自分でも思う。だから一層あの女に怯える。あの女は奔放らしいのできっと私より楽だろうと思う。本当に袋小路の堂々巡りだ。ごめんなさいと謝ったら、留三郎は私から手を離してもう一度、今度はさっきより更に深い溜息を吐いたので、思わずびくりとしてしまった。 「びびんなよ。怒ってねーからな」 どうしたら信じるんだお前はと留三郎が言うので顔を上げて彼の顔を見たら、予想と違って、困ったようにちょっと笑っていて、私は溜まらなくなって両手で顔を覆い、「甘やかして!」と喚いた。したところ留三郎はヤケクソ気味に「良し来た、来い!」と叫んで両手を広げたので私は遠慮なく私のための胸板に飛び込んで首筋の赤い跡の上にでかい歯形をつけ、気が済むまでずっと泣いてやった。日が暮れるまで泣いた私に、同学年だと思えねーよばか、と留が笑いながら言ったから、私は一年も二年も遅く生まれたりしなくて本当によかったと思ったのだった。
好き好き大好き超愛してる!
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