「ごめんね立花くん。私守備範囲が五歳以上年下からなの。少年しか愛せないの。ショタコンなの。自分と同じ歳の野郎なんて汗臭くてデカくて重くてむさくってマジ無理って感じなんだ。ていうか君の委員会の黒門くんとかタイプだなあ、紹介してくれる?綺麗なおねえさんは好きかしら?」


というのが私の女性遍歴に黒星を付けた唯一の女の台詞だ。完敗だった。なけなしのプライドでなんとか軽蔑の目で睨みつけ「痴女が」ということはできたが、女は「よく言われる」と笑ったのであまり意味がなかった。いっそ清々しいほどの敗北である。咽喉を掻き毟りそうなほど腹が立った。
金持ちの美人で高嶺の花だという噂だったのだがとんだ紛いものを掴まされた。勘違いだった。マジ無理って感じなんだ。は私の台詞であろう。その後、どういう経路か同級生にそのことがばれ、文次郎は何か言う前に殴ったものの小平太には爆笑され食満と長次には団子を奢られた。屈辱だ。そのうえ、「あ、そーだ私友達いないのよね。友達になって立花くん」とか。それ以来なんだか付きまとわれている。伊作が細木和子の六千戦術をくれたので読んでみたらその年は大殺界だった。やっぱりな・・・

クソッ一年前のことなのに未だに思い出しただけで腹が立つ。この変態女めが。私はもうさっきからシャーペンを二本も折っているのだが、元凶の変態は私のベッドに寝そべりながら毒々しい睫を生やした二人の人間らしきものが絡んでいる絵が表紙になっている本をニヤニヤしながら読んでいて虫唾が走る。三本目のシャーペンが粉砕された。舌打ちすると女は思い出したように本をとじた。
「立花くん小さいころの写真可愛かったね。七松くんのアルバムで見たわ」
「黙れ痴女が。今でも可愛いわ」
「余裕っぽいとこがダメなのよ。デカいし。大人の男にしては全然キレーなほうなんだけど」
「何様だ貴様」
「お嬢様」
むかつく!死ね!シャーペン弁償しろ!このペド。机に広げた数学には全然集中できず返り怒鳴りつけようと女を振り返ったがは相変わらずうふうふうふうふ笑って気持ち悪い。胸元のボタンが外れたシャツの隙間からベージュの下着が覗いていて若いんだから下着ぐらいパステルカラーのをつけられんのかこいつはと思う。怒鳴る気力もなくなる。は私の視線に気が付いたらしく「このブラジャー滅茶苦茶可愛いのよ。胸のプリントしてあって乳首のところに黒い★がついてるの」ジーパンプリントのジャージみたいなもんよ。とほざいた。可愛い?それがか?美的センスまでどうかしているらしい。というかそれブラジャーの意味ないだろうが。初めからニプレス付けろ。
「ニプレスってはずすとき痛くない?」
「知るか」
私は一体何をしているんだろう。「浦風君なら全然アリだわー。3歳下なら犯罪じゃないわよね」とか、笑ってる、変態を凌ぐ変質者が憎くてたまらない。私はもう最近ずっと普通のデートのときも相手がコイツだったらとか考えて精神的に相当やられているのに。こんな女のどこがいいのか自分で自分がわからない。しかし会うたびに忘れられなくなっていくしこいつのことを考えれば身体は盛り上がる。自分で持参したチョコレートマフィンをはむはむ食べているを可愛らしいとか思ってしまって私はまた今まで味わったことのないような凄絶な挫折を味わうのである。こんなことならホモにでもなったほうがマシだった。の胸元に見える有得ない模様の下着が神経をわしゃわしゃと引っ掻いていく


テーストオブ苦虫