進級してからというもの、眠るたびに仙蔵が夢に出てくる。只の夢ではない。淫夢。正直死にたい。毎晩淫夢見てるというだけで俺の精神には相当深い傷ができているのだが、そのうえ相手が同室の同級生で四年間も共に生活してきた野郎だという事実は落雷のような勢いで俺を打ちのめす。今はもう、眠るのも自慰をするのも女を抱くのも苦痛以外の何者でもない。全て夢の所為だ。なんなんだ俺は。いじめか。夢は日に日に現実味を増していく。心境的にはどん底なのに身体は非常に元気。言いたかねえが元気。ぎんぎーん。

ほんと死にたい。

毎朝自殺衝動と仙蔵への罪悪感とあのなんとも言いがたい興奮を抑えながら支度をするのは大変な労力だ。このまえは伊作に「人を殺しそうな顔をしているよ」といわれた。お前を殺すぞ。

そういうわけで俺は最近さっぱり眠れていない。

周りは人の気も知らず寝ろ寝ろと煩い。眠れないんだといってしまいたくなるが、不眠であることがばれた場合の、治療だなんだと理由を付けて俺を体よく実験台にするだろう伊作、そんな柄かと嘲笑する仙蔵小平太、などが容易く想像できるので結局誰にも告げていない。つーかなんて説明するんだよ。不眠?なんで?と聞かれて俺はなんて答えるんだ。仙蔵が夢に出てきて?言えるか。それこそ死んだほうがマシだ。

「お前そんなに鍛錬が好きなのか?」
「・・・好きじゃねーよ・・・」
「なら何故毎晩毎晩出て行く?というかお前本当に寝てないのか」
「寝てる」
嘘だ。貫徹五日目だ。

仙蔵は心の底から不思議そうに小首を傾げている。見るな。俺は苦無を握る手に力を込める。お前が同室なのが一番問題なんだよ。忍たるもの何処ででも寝られるようにしなければならんだろ、とか、今思いついたことを早口で喋りながら障子を引いた。後ろで府に落ちなそうな仙蔵が、あまり無理をするな、とか言ってきて、俺は殆ど泣きそうになりながら走り出す。細い首筋の白さが、網膜に焼き付いていた。

(青の時代/end)